秩父夜祭をはじめ、秩父地方のお祭りで演奏されるお囃子が「秩父屋台囃子」です。小太鼓の流れるようなリズムの上に、「大波」「小波」など様々な節で構成される独奏性の強い大太鼓の音色が乗り、笛、鉦(かね)と混然一体となって紡がれます。
曲目は、「大太鼓」及び山車が回転する際に大太鼓以外で演奏される「玉入れ(たまいれ)」の2つです。 祭当日は笠鉾(かさぼこ)や屋台の幕の中で演奏され、外からは見ることができません。
山車の動きと一体となって街中に轟くダイナミックな屋台囃子は、否応なしに聴くものを鼓舞し、祭りを盛り上げます。
江戸時代に入ると、江戸を中心とした歌舞伎などの芸能文化は、人流の増加、産業・文化の発展とともに各地へ波及していき、秩父地方の祭礼でも屋台上で歌舞伎や曳き踊り(所作)が演じられるようになります。
秩父屋台囃子の発祥については諸説ありますが、歌舞伎音楽における儀礼囃子との共通点を垣間見ることができます。このことからも、江戸から祭礼文化とともにお囃子が秩父谷に流入して屋台囃子の原型ができ、長きにわたる祭の変遷の中で独自の発展を遂げ、幾多の伝承者によって現在の形に整ったものであると考えることができます。